なるほど、たしかに。
そのギモンを提示された時には思い出せなかったが、映画「瀬降り物語」の中で、山の民の女役の藤田弓子が垂れ下がった紐にしがみつき、いわゆるウンコスタイルで出産するシーンがある。もちろん一人で。
そうそう、あの中上健次原作の映画でその時代はいつなのか調べてみたが特定はできなかった。
たしかに、「ヒトはいつから一人で産めなくなったのか」。
そのギモンを提示された時に閃いたのは、「子どもを産むということがセレモニーとして周知されるようになった」という回答だったが、言った自分でもぴんとこない。
もひとつ思い浮かんだのは、「出産の商業化」。
出産に大勢の人間が関わるのは、それが仕事としてありえるからではないだろうか。
子どもの誕生を喜ぶというのはもしかしたら何らかの意図があっての刷り込みなのかも知れない。映画「瀬降り物語」のシチュエーションでは出産自体不浄な出来事であった時代の話だったような記憶がある。
でも今ではポッと顔を赤らめ「できました」というと周人たちは歓喜の声をあげる。
この子をこの世に誕生させたい一心で毎晩励んだ男女もいるだろうが、劣情の結果として誕生する時もある。
問い詰めれば、身も蓋もない話になってしまいそうなのでこの辺でやめておくけど、
「ヒトはいつから一人で産めなくなったのか」の答えはもしかしたら、
「ヒトが人間になった時から」なのではないか。
人間という概念はそれほど古くはなく、百年ちょっと前ほどに作りだされたものなのである。のよ。